自分と周りをご機嫌にする
専業主婦から希望の就職を果たした船本由梨さん。求職中にハローワークで言われた衝撃的な一言や「女性のためのウェルカムバック支援プログラム(※記事内で後述)」を活用した学び直しなど興味深いお話をうかがうことができました。「私らしい働き方」を実現している彼女の今を取材しました。
ハローワークに履歴書を持参して、「子どもがもうすぐ1歳になるので、これから働きたいと思っています。残業はできませんが、働いていた実績もあるので、正社員で働きたいです」と言うと、職員の方がパラパラっと履歴書を見て「残業が出来ないとなると正社員は難しいので、時給900円のパートになります」と言われたんです。
えっ無いの?と。残業が出来ないと正社員での就職は難しいというのは多分、固定観念だと思いますが、当時はそう言われて、そうなんだと落ち込みました。
新卒で就職し、結婚、出産を機に離職して専業主婦になりました。
ですが、専業主婦で稼ぎがないので、夫が稼いだお金を上手く使えなかったんです。
やっぱり自分に収入がないと、貯めちゃうんですよね。
生活も縮こまってしまって。
当時は、在宅ワークで、Web記事のライターをしていましたが、ひとつの記事を書いても2万円程が限度で、もう一回働き直そうかなと思ってハローワークに行きました。
福岡女子大学が「再就職支援」として行っているワークショップです。
仕事復帰を目指す仲間と3~4ヵ月間(週に2回ほど)大学に通い、プログラムを受講していく中で、私らしく働くことについて学び、再就労を目指します。
私はちょうどハローワークでの出来事の後、福岡市政だよりにこのプログラムが載っていて、これだ!と思って応募しました。
受講料無料で、大学構内に託児施設も完備されているので子ども連れでも安心して受講できました。
現在、通販会社の人事部に従事していますが、実は人事の経験はなかったんです。
応募する時に、採用事項に人事の経験3年と書いてあり、どうしようと思って、講師の先生に相談しました。「経験がなくてもWeb記事のライターをしていた際に、人事の記事を書きましたって言えるよ」と教えてくださり、面接のアドバイスもしていただきました。
プログラムの内容や講師の先生、受講した仲間のおかげで、自信をもって採用試験に臨めたので、無事受かる事ができました。プログラムは楽しく、学び直しの機会を考えている方にはお勧めです。
入社後、一度大きな挫折を味わいました。
人事部の総合職として採用されたのですが、周りのスピード感についていけず、本当にきつい想いをしました。業務の報告も理論立てて言えず「それは憶測ですか?事実ですか?」と聴き直されたり、Excelも使いこなせず、理解していないことを隠し、後々やり直したり、ミスもしました。
ミスが続き、保健師に泣きながら相談したこともあります。夫にも心配され、辞めようか辞めないかぐらいまで追い込まれていた時、会社の人に相談したら、「今のあなたに合ったフォローサポート(事務職)の仕事はどう?」と言われました。
じゃあ、それにしようと思い、入社から1年ほど経ったキャリア転換の時期に、求めているレベルに達していないので、事務職にキャリア転換し、再度総合職を目指したいと伝えました。
現在は3年経ち、自分の中で色々な事が出来るようになりました。Excelも酷かったけど資格も取って自信を持つことができました。
今後プロジェクト推進や管理職など、総合職にならないと出来ない仕事ですが、それに挑戦してみようかなと思い始めています。
自分なりの対処法はやっぱり書き出すことです。
頭に溜めたままにせず、言うことでもいいけれど、私は書きます。元々ライターをやっていたので書くのが好きなんです。
よく出るキーワードがわかるし、落ち込む時って客観的に見ると結局自分の問題だなって気付くんです。人にこう言われて、なんでこんなこと言うのだろう、こんな言い方しなくてもいいじゃないかとか、最初はムカつくとか、言い方きついとか、乱雑に書くけれど、最終的に自分が力をつければいい、受け取り方を変えようと思えるようになります。
相手を変えるより、こっちの方が早いと。だからやっぱり書きますね。
モヤモヤするのって本当は辞めたくて、こっちの道とか、興味あるけど妥協しているからモヤモヤするのかなと。興味があるなら一回やってみればいいと思います。仕事として収入を得なくてもボランティアでも。
例えば写真を撮るのが好きだったらSNSを開設してみるとか、行動を起こしていつ辞めても大丈夫という気持ちでいる方がいいと思います。
私も辞める状況になったとしても、自分の収入は何とかなるように、株や投資をしていて、目標としている額も設定しています。
「自分と周りをご機嫌にする」というのを自分のテーマにしています。
私は毎年手帳に、マンダラチャート(目標を成し遂げるために必要な項目を可視化するフレームワーク)を記載しています。チャートの真ん中に「自分と周りをご機嫌にする」と書いて、その周りにキーワードを書いています。
ご機嫌でいると、周りから「どう?これ行ってみない?」みたいに紹介を受ける事も多いです。
実は、人事の求人もプログラムを一緒に受講した仲間が「これ船本さんに合いそう。あなた人事やりたいって言っていたし」と教えてくれたんです。
社会人になり、結婚・離婚・独身・出産・育児・介護とさまざまな選択をしていく中で、キャリアとプライベートの優先順位を迫られるのは、いまだに多くが女性だと私は考えています。長時間労働(残業)や性別役割分担意識もまだまだ根強い日本社会では、女性の仕事観(仕事をする目的や意義)が芽生えにくいのも当然だと思っています。
そんな中でも、「私らしい働き方・生き方」を求める女性は増えていると私は感じています。船本由梨さんのように、自治体や教育機関の支援を上手く活用し「私らしい働き方」を実現できているのは、フットワークの軽さと情報収集力だと感じました。おのずと自分に合った情報が入ってくる彼女のように、私もいつもご機嫌でいようと思いました。