自分らしく生き生きと輝ける女性を増やしたい
今から4年前、あなたはどんな働き方をしていただろう?2020年、世界的に大流行した感染症は、この夏も流行の波が来ている。この感染症をきっかけに、自らの働き方を見つめなおした人も多いのではないだろうか?今回ご紹介する井手 紋(いで あや)さんもその1人だ。
「コロナが私の中ではきっかけでした。 医療現場は、もともと人手不足で、そこにコロナが流行して多忙を極めたんです。職員もコロナにかかり、でも業務は減らず、疲労感が増していって。
私、この仕事好きだったのに、患者さんに対して誠意を持って接することが難しくなっていると感じてしまって。モチベーションが落ちていく中で、私はこの先も同じ仕事を続けたいのかなって思い始めて、ずっとモヤモヤしていました。
でも考えてもわからないんです。この仕事しかしたことがないので。ただ、気づいたら自分の中で10年後もこの仕事を続けているイメージが湧かなくなっていました」
「私、何がしたいんだろうと思って。子どもが小さいうちは、自分を振り返る時間をとってなくて、自分の趣味や好きなこともわからなかったんです。子どものことならわかるのに、自分のことがわからないんです。
ちょうど育休中に、支援プログラムのパンフレットを見ました。これだ!と思ったのが、『自分を振り返る』という項目があったことでした。自分だけでは、どう振り返っていいかわからないというのが大きかったですね。
あと、転職するにしても、医療業界しか知らないから一般企業で働く場合、自分の足りないところがあるのかというのも知りたいなと思って応募しました」
「全然違います。1番はやっぱり自分を振り返れたことですね。自分は何もできないし、これが自分の強みですと言えるものがないと思っていたんですが、そんなことはなくて。
自己肯定感がものすごく低くて、それを少しずつ底上げしてくれたのは、プログラムにあったグループワークでした。みんなプラスのことしか言わないんです。それいいよねっていうフィードバックをもらうと、私ってこんなことできたんだ、これ強みなんだって、少しずつ思えるようになって。1歩踏み出す勇気も出てきましたね。
受講終了後に、グループワークの良さと、みんながキャリアや自分のことについて考えられる場がもっとあればいいなと思って、キャリアコンサルタントの仕事に興味が出てきたんです」
「医療事務の仕事が嫌いなわけじゃ決してないんですが、1対1でずっと寄り添っていける仕事がしたいと思っています。病院でも、顔見知りになった患者さんに『今日体調どうですか?』とか、近況とか聞いて、信頼関係を築いていて、自分の中でやりがいもあります。ただ、患者さん全員となると、多忙な毎日の中で、1人ひとり丁寧な対応ができないという葛藤もあって。
今後は、まずはキャリアコンサルタントの資格をとって、転職を考えています。同じようにキャリアに悩む方々のコンサルタントができたらいいなと思っています。自分がキャリアで悩んで、いろいろ経験して共感できる部分もあると思うし、3人の子どもを育てながら働くことも自分の強みになっていくのかなと思うので。
一般企業などでキャリアコンサルタントの経験を積んで、ゆくゆくはフリーランスの働き方も視野に入れています」
「私、キャリアは自分と程遠いものだと思っていたんです。私みたいにパートで働いているような人じゃなくて、バリバリのキャリアウーマンみたいな方が目指すところで、プログラムの応募も最初ためらっていた部分はありました。
でも、ちょっと気になると思って勇気を出して、1歩踏み出したので、今の私があると思っています」
「1人の時間ですね。それ難しいんですけど(笑)。でも、1人時間に本をゆっくり読んで、自分の気持ちを書く。日記というか、毎日は書けないんですけど、とりあえずこのモヤモヤを出す感じで。どんなことで悩んでいるんだろうと。
書くことは、受講生仲間に勧められて、じゃあ私もやってみようと思って。なんだか心がスッキリするし、体力的にも回復した感じがします」
「やりたいことを我慢しないでと伝えたいです。
キャリアコンサルタントを目指すのは、私と同じようにキャリアに悩む方々のコンサルタントができたらいいなという理由と、もうひとつあって。
それは、自分の子どもたちが将来同じようにキャリアに悩む時期が来ると思うんです。その時に、子育てと仕事、両方諦めてほしくないという気持ちがあります。
自分のしたいことを、結婚したからできない、子どもを産んだからできないと諦めるんじゃなくて、両方できるという環境を作っていきたいと思っています。少子化の時代だからこそ、女性たちもキャリアを積みながら、子育てや家事を両立できるような社会になればいいなと思っています」
井手紋さんと出会ったのは、「福岡キャリア・カフェ(※注)」主催のイベントだった。まっすぐでキラキラしている彼女の瞳に魅かれ、イベント終了後に話しかけた。井手さんは、新型コロナウイルス感染症がきっかけで、自分の働き方のモヤモヤにフタをせず、行動することを選んだ。
私も4年前まで会社員として働いていたが、感染症もひとつの契機として捉え、働き方を変えた1人だ。感染症が社会にもたらした影響は大きく、各自治体や企業は在宅勤務などの対応を余儀なくされたし、医療現場はひっ迫した。個人においても安心安全が脅かされ、すぐそばに「死」を感じた。
人それぞれ変化をもたらすきっかけは違う。そのきっかけをどう捉え、行動するのかしないのか。なにげなく見聞きした情報が、選択の幅をひろげ、あなたの未来を変えるかもしれない。この記事も、あなたが笑顔になるきっかけになれば、とても嬉しい。
(※注)福岡県が公立大学法人福岡女子大学に受託して行っている、様々な分野でキャリアを積んだロールモデルとの出会いを提供するネットワーク事業。
キャリアカフェの内容は下記参照下さい。
医療系の専門学校を卒業してから、就職、結婚、出産を経て13年間ずっと医療事務の仕事に携わっている井手紋さんは、今、医療とは別分野の資格取得に励んでいる。目指すきっかけはなんだったのだろう?