インタビューNo.36

みんなの働き方

ゆらぐ日々も、どうぞご機嫌に


「働くのが好き、ずっと仕事がしたい」そう語ってくれた今泉ひかりさん。現在、健康食品の企画・開発・販売等を事業とする会社を経営している。彼女の歩んできた道には、いつも「ものづくり」があった。

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ずっと仕事を続けたいと願う今泉さんの原点は、家庭環境にあった。

「私の家庭は、ステップファミリーで、母は離婚して再婚しました。母は経済的に厳しい状況下で、様々な仕事をしつつ、義父の介護、家事育児を担っていました。

世間一般的に『男性は仕事、女性はケア労働(子育てや介護)を担うべき』という価値観の中で、経済的に女性が自立するのは大変だと子どもながらに感じました。

私は、女性でも経済的に自立できるように、ずっと仕事を続けたいと思いました」

 

 

今泉さんは、現在30代中盤。商品開発をするにあたり2023年に会社を設立するが、人生を遡ってみると、高校卒業後の10代はアパレルの販売員、20代は士業系の会社で事務職を経験していた。

「学生の時から『ものづくり』に興味があり、服飾科がある高校へ進学しました。

卒業後はアパレル会社に入社して、洋服のデザインや企画、ブランドを作りたいと思っていました。仕事も好きだったので、当時は朝から晩まで働く生活だったんですが、実家の家族を支えるための時間確保が必要になり、働き方を見直すことにしたんです。

土日休みで、定時で帰れる働き方を選択し、20代初めに士業系の会社に事務職として勤めました。結婚を機に、別の士業系の会社に転職しましたが、事務職のキャリアを10年ほど積みました」

 

 

着実にキャリアを積んでいた今泉さんは、妊娠、出産のため育休に入る。ちょうどその頃、世界的に大流行した感染症の影響で、対応が早い学校、時間がかかる学校と教育に格差が見え始めていた。今泉さんは、これから生まれるわが子への教育の在り方について考えるようになる。

「どこに住んでいても、質が高い教育や情報を得る機会を作りたいと思いました。

そこで、アメリカが発祥の『STEAM教育』(スティーム教育:科学、技術、工学、芸術、数学の5つの分野を統合的に学ぶ教育)を書籍で知り、それを取り入れた活動をしようと思いました。当時住んでいた久留米市との協働事業といった感じで補助金を原資に、取り組みはじめました。

具体的には、子育て中のママがオンラインで繋がって、海外の教育や質が高い教育、日本はこれからどんな教育指針を立てようとしているかみたいなことを知識として入れる活動です。

3ヵ月のプログラムも作って、子どもの観察を通してママの子育ての価値観を見直し、子どもと一緒に楽しめるアクティビティを作る。コロナの時期って、それぞれが一生懸命ストレスの中で子育てしていたから、それがちょっとでも和らいで、なおかつ子どもにもためになる教育プログラムができたらいいなと思って活動しました」

イメージ図

 

育休中のSTEAM教育の活動を通じて、自身のキャリアも見直した今泉さん。テクノロジーにも関心が高かった為、士業系の会社を退職し、半年間プログラミングスクールに通った。

「その頃は、STEAM教育の活動にプログラミングを活かせたらいいなと思っていたのと、育休が明けてフルタイムで復帰する働き方に限界も感じていました。

子どもの送迎、家事、フルタイムの仕事だったのできつくて。在宅で仕事ができたらいいなとも思いました」

 

 

プログラミングスクールの卒業制作で、子どもの作品と声を飾るバーチャル美術館というプロダクツをつくった今泉さん。スクール終了後も、ママのモヤモヤが解消に向かうプロダクトやサービスは何かを徹底的に調査する。

女性って、ライフステージが変わると生活や働き方も変わる。

その都度、戸惑いがあり、モヤモヤする。そのモヤモヤを解消したいと思ったので、数十人に声をかけヒアリングしました。オンラインで北海道や海外在住の方ともつながって、その事実確認をする期間はけっこう長かったですね。

ただ、女性が抱えるモヤモヤって、自分や子どもの年齢でも違うし、独身か既婚かでも違うし、たくさんのモヤモヤがあることに気づいたんです

女性が抱えるさまざまな悩みイメージ図

 

 

ヒアリングを重ね、女性のモヤモヤがたくさんある中で、解決すべき「モヤモヤ」にまつわる女性の課題や事業領域を再考した今泉さん。解決策は子育て領域というより、ヘルスケア系の領域にあるのではないかと気づいたのは、自身の体調不良がきっかけだった。

「2021年の冬ぐらいから、体調不良を感じはじめました。

産後ということもあり、コロナにも3回ほどかかりました。過敏性腸症候群のような症状がでていましたが、最初は特に気にしませんでした。」

 

 

仕事や日々の生活にも支障をきたすほど体調不良が続いたことで危機感を覚えた今泉さんは、内科や胃腸内科にいくつも受診。胃カメラ、大腸カメラ、血液検査もしたが、特に異常はなかったという。投薬、注射、食事療法、運動、睡眠の改善、ライフログもつけ、ありとあらゆる改善策を講じてきたが、一向に改善せず、生理がとまってしまう。

「妊娠でもなく生理がとまったことで、婦人科を受診しました。

生理周期の記録を辿り、排卵日から生理前の期間に嘔吐や倦怠感が増すとわかりました。PMS(月経前症候群:生理前に現れる心身不調)かもしれない、そこから女性のホルモンバランスを意識した薬膳やハーブティーなどを摂取することで、少しずつ症状が改善し、体調も快復していきました。

私自身、すごく具合が悪くて、仕事を思うようにできなくて、もどかしくて、なんとか迷惑がかからないようにと頑張って、悪循環を繰り返す。

その経験を通して、更年期や女性のライフステージに合わせた知識、アイテムを届けるような事業がしたいなと思いました」

 

 

健康をサポートする商品でモヤモヤを解消することを決意した今泉さん。2023年に、クラウドファンディングで目標金額を達成し、食べるフェムケア発酵サプリ「わたしの酵活」を商品開発、販売することに成功した。

「商品開発の時に、まとまりかけた商談がゼロになったことがあって。その時に、私が作る意味みたいなのを考え直しました。そこから、やっぱり地場の会社と『ものづくり』したいなと思って、福岡産ブランドいちじく『とよつひめ』を素材とすることが決まりました。

試作を何度も重ね、味にもこだわりました。本当にこの商品を買ってくれるのか、テストマーケティングとして、クラウドファンディングにも挑戦しました。

今後もサプリに限らず、日常の中で、女性特有の悩みを解決できるアイテムを増やしていきたいなと思っています」

 

 

今泉さんの仕事への取組みは、根底に『ものづくり』があると感じた。自分が手掛ける『ものづくり』で多くの女性の悩みを解決したい、形になるまで諦めない、妥協しない今泉さんの姿勢が、多くの人の心を掴んだ。

ライフステージごとに働き方も柔軟に選択できる時代になってきたからこそ、どこにいても何をしても、自分が働く意義を見出せずにいると、モヤモヤが溜まる。自分のモヤモヤから逃げず、戦い続けることで、その先に光がみえる。そんな勇気をもらった取材となった。

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